「デンマークで保育士」特別寄稿コラム vol. 2 自己決定

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デンマークでは、どのような保育をしているのでしょうか?
デンマークで保育士経験のある遠藤祐太郎さんが現在執筆中の書籍「デンマークで保育士2022(仮題)」からの寄稿コラム。第二回目のテーマは「自己決定」です。

 

 

*本コラムは個人の経験とそこで感じた率直な想いをそのままお届けするものであり、デンマークの教育の全体像を客観的に示すものではございません。内容については、デンマーク全体で共通していることもあれば、園によって方針や実践には多少の違いがあることをご了承ください。

 

危ない遊びも退屈な時間も、「自己決定」を大切に

 

デンマークでは、自由時間はほぼ自由。 保育士が「何々ゲームをやろう」と言ってみんなを集めることはあまりせず、自由時間ではほとんど好きな遊びを行う。園庭にある木に登ることも普通のことで、わりと高いところに上がっても保育士がそばで見守ることはしない。

 

こういったシーンは数多く存在するが、私から見たらドキドキである。ついつい保育士に 「あれは大丈夫?」と質問すると、「全く問題ないよ。」と平然と言う。

 

怖いと思ったら自分でやめ、行けそうだったら自分でいく。デンマークの保育のねらいのひとつとして、「自己決定」を大切にする。まさにこういった場面の時に使うようだ。

 

また 逆に退屈になった時でも、自分で何がしたいかを探すことも大切だと言い、あえてそのまま様子を見ることもする。私は退屈そうな子ども見つけたら、自然に手を差し出してしまう。

 

しかし、保育士たちはその手を差し伸べる私を見ては、「 Tak 」(ありがとう)と言う。そう、デンマークでは「絶対にこれが良い」という決めつけをしない。私のスタイルが、珍しい光景だったようだった。

 

 

高いジャンプ

 

私が働いていた保育園では毎朝、隣にあるフォルケホイスコーレのスプリングセンター(体育専攻の学生用に本格的な設備がある体育館)に行き、朝の自由時間を過ごす。そこには、学生が利用する大きなトランポリンや体操に必要な器具が揃っている。日本の感覚から言うと、かなり危険なゾーンとなる。

ほぼ驚くことばかりだが、園長先生のドーテは「このような場所で子どもたちを生きいきさせることが大切なの」と言う。確かに危険な場所である。一歩間違えれば、ケガ、いや大ケガに繋がる。

 

そういった面で、ここを利用する前には必ず保育士がルールをアナウンスする。トランポリンは必ずひとりで行うこと、勝手に体操用具を使わないこと、などルールとしては基本的なことだが、それでも何度も言う。

 

実際に遊びだすと、保育士はそこまでチェックして見ることはしない。でも子どもたちは、トランポリンなどで楽しんでいる。昨日よりも高くジャンプをしようと楽しんでいる子どもたち。マットを利用して楽しんでいる子どもたち。

 

私はいつもこの姿を見ては、これが子どもだと思った。はじめから危険と教わる前に、自分で経験してからから危険と感じるのでは訳が違う。子どもたちはここで大きな経験値を積んでいると感じた。

 

 

人前で話すことの大切さ

 

デンマークでは園にいる時から、自分の意見を言えるような環境づくりをする。特に休み明けの月曜日の朝の会では、よく話し合いの時間を作る。

 

いつも以上にマーチンが大げさなスタイルで、「週末は何をしたの?」と園児たちに問いかける。すると4、5歳の園児が静かに手をあげ話す。ひとりひとり、小声でゆっくりとした口調でお話をはじめる。

 

一生懸命話している園児に向かって、誰ひとり邪魔をすることなく、じっと聞く。いや、じっと聞かせる。

 

マーチンは、園児が話している内容を膨らませながらみんなに教える。ここで重要なことは、園児たちが自分の気持ちを他人に伝えるということ。そして、それを聞いてどのように思ったか?ということを大切にしている。

 

園児たちが頑張って意見を伝えた最後には、デンマークの保育士なりに褒める。「スゴい」という言葉は使わず、「内容をしっかり言えて、よくわかったね」とか「話を聞いていると楽しそうだね」と園児たちに伝える。

 

デンマークでは人前で話すことを大事にしている。勉学よりも人前で話すことを大切にするところは、デンマークらしいかもしれない。

 

 

寄稿:遠藤 祐太郎
保育士・学童スタッフ・デンマーク留学アドバイザー

1986年東京生まれ、2006年日本児童教育専門学校卒業。2009年に保育士資格を取得。立川市内の保育園に勤務した後、2014年8〜12月までオレロップ体育アカデミー(フォルケホイスコーレ)留学。2015年2月〜8月までデンマークのベァネゴーンイオレロップ保育園に勤務。同年8月帰国。現在は都内の私立保育園と学童に勤務し、かつ年に1度のペースでデンマークで保育研修をしている。
『デンマークで保育士―デンマークの子どもたちからもらったステキな時間』著者。

 

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