Event report: Webinar series by Principal of Forest Kindergarten in Denmark

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Sorry, only in Japanese.

グローバル化やIT・人工知能の進化、そして新型ウイルスによる社会への影響など、かつてないほどに社会が急速に変化をとげ、それにともなって課題の複雑さも増している現代。子どもたちには、自分を信じ、そして変化を楽しみながら、多様な他者と協力してたくましく未来を切り拓いていく力を身につけてほしい、と願う保護者や先生も多いのではないでしょうか。そのような時代背景において、多様な子どもたちの個性を活かし、自信・自尊心・創造性を育てる場として、北欧デンマークの森のようちえんは世界でも注目されてきました。今回はデンマークの教育機関 ボンサイ研究所と、Lilla Turenを運営するノルディック・インスピレーションで共同開発を行なった、「森のようちえんとデンマーク流保育対話型ワークショップ」の第3期の開催レポートをお届けします。

 

学びだけではなく、実践へと繋げていく「対話型ワークショップ」

<Børneøen Bonsai(こども島ボンサイ)の園長/リッケ・ローセングレンさん>

「北欧の教育のアプローチに興味・関心はあるが、どう実践に繋げたらいいかわからない」

そんな声にお応えするべく、コロナ禍の2021年5月にオンラインで開始したのが、「森のようちえんとデンマーク流保育 対話型ワークショップ」です。

実際に北欧に行きたい。でも行くことができない。そんな中でも、“理解するだけではなく、実践につながる学びを提供したい“ という想いを込めて、このワークショップを企画しました。

このワークショップは、森のようちえん・シュタイナー幼児教育施設のBørneøen Bonsai(こども島ボンサイ)の園長であり、書籍『北欧の森のようちえん 自然が子どもを育む』の著者でもあるリッケ・ローゼングレンさんとLilla Turenを運営するノルディック・インスピレーションが共同開発。オンラインで日本とデンマークをつなぎ、約25年の実践者であるリッケさんとの対話を通して、日本にいながら北欧の保育の現場を体験できるワークショップです。

実践者のみなさまがより現場の空気を感じられるよう、ワークショップでは通常の講義だけではなく、多様な形で体験型コンテンツを導入。保育の様子を映像で視聴したり、ボンサイで働く日本人保育士の方からのお話を聞いたり、ワークで実際に体験したり、リフレクションとしてグループでの対話も行いました。

対話の後には、北欧の森のようちえんの現場から受け取ったこと、また自分たちが感じているハードルの話などを全体にシェア。リッケさん、そして参加者の皆さんと一緒の意見交換も、実践者ならでは意見が多く寄せられとても盛り上がりました。

 

北欧の森のようちえんの子どもたちの成長を支える
「保育の理念や哲学」と「実例」を学ぶことで応用力を高める

第3期目となる今回は、2022年11月から3ヶ月間にわたり、こちらの3つのテーマでワークショップを開催。いずれも、幼児保育に関わる方にとっては慣れ親しんだテーマに見えるかもしれません。しかしだからこそ、そこには彼女たちならではの理念や哲学がたっぷりと込められていたのです。

1. 2022年11月「リズムと日常生活」
2. 2022年12月「自信と自尊心」
3. 2023年1月 「子供の観察と成長の理解」

なぜ、森で過ごすことが子どもたちにとって良い環境だと言えるのか。
なぜ、子どもたちの「リズム」を意識したカリキュラムを作るのか。
なぜ、アクティビティとアクティビティとの間の「移行」の時間の過ごし方が重要なのか。
なぜ、子どもたちは自尊心を育むべきなのか。
なぜ、危険な遊びをする際に、大人は注意したり、手を貸したりしないのか。

日本とデンマーク。子どもを取り巻く環境が異なる中で、今ある環境の良い点を最大限活かし、応用していくためには、ノウハウやテクニックだけではなく、その背景にある理念や哲学を理解することが重要です。

今回は、講義の中でたっぷりとその理念や哲学を聞き、さらに後半の対話の時間の中で具体的なシーンでの対応や、自分たちが持つ課題へのリッケさんからのフィードバックをもらうことにより、理論と実践の両面から理解を深めることができました。

参加者の方からは、このような声も届きました。

「今回のワークショップでは、ただ実践につながるノウハウを知るためのものではなく、どうしてそのようにふるまうのか、その根底にある理念や哲学をお話してもらうことができたと思います。さらにそこから、再現可能なワークや、具体的な現場での対応のお話などを聞けたことで、より理解が深まり、実践へとつなげていける実感がありました。」

 

同じ未来を夢見て実践を続ける、全国の仲間との対話から得られること

今回で3回目の開催となる本ワークショップには、さまざまなバックグラウンドを持つ実践者の方にご参加いただきました。日々保育の現場で働く保育士の方、保育円・幼稚園の経営者の方、これから森のようちえんを開きたいと思われている方、小学校など教育の現場で働かれている方や、北欧の教育に関心のある学生さんなど。それぞれみなさまが、実際に子どもたちと関わる場を持つ「実践者」の方ばかりでした。

<第3期の対話型ワークショップにご参加いただいたみなさま>

 

リッケさんに対してのシェアの時間には、たくさんの悩みや課題についてのコメントが多く寄せられました。経営者として感じる課題。頭ではわかっていても、実践へ落とす時に感じる壁。まだまだこれから理解していきたい段階での悩みなど。

それぞれの立場からだから感じられること、それぞれの立場だからこその悩みなどのシェアがあったことは、とても大きな学びに繋がったと思います。

「今後、場を作っていくにあたり、自分にはない実践経験や、専門性を持つ仲間と繋がれる機会はとても貴重でした。」

「自分だけでなく、全国に同じ未来を描く仲間がこんなにいるんだと思うと、とても勇気をもらえました。」

「日頃からシュタイナーについての学びの場にはよく参加させていただいていますが、今回はシュタイナーというよりは『森のようちえん』というテーマで集まった方々だったので、普段接することがない職業の方との出会いがとても貴重で、刺激になりました。」

 

ワークショップを終えて/参加者の声

今回、ワークショップにご参加いただいた3名の方より、ワークショップでの学びや、その後の変化などのお話を伺いました。

●東優子さん/保育士・色彩子育て教室運営

これまで保育の現場で働いてくる中で、日本人の幸福度の低さを感じ、ずっと壁に当たっているような、行き詰まった感覚を持っていました。今回こちらの講座で子どもの保育の現場で、何を大事にしているのか、どんなことをしているのかを聞くことができて、これまで探していた答えを見つけた!という感覚があります。

印象に残っているのは「リズム」のお話です。1日の時間の中にも、1週間の中にも、1ヶ月の中にも、1年の中にも、生き物である私たちには「リズム」がある。例えば、呼吸の「吸い込む」と「吐き出す」のリズムや、季節が巡り、冬に溜め込んでいたエネルギーが春になると芽吹くリズムなどです。

これまでなんとなく自分の気持ちの整理がつかないときなど、もやもやしたり、苦しく感じたりすることがありました。でももしかしたらこれは、リッケ先生の言う「吸い込む」時期なのかもしれないと思えるようになったんです。それから、「自分のリズムを尊重し、今はできることをして春を待つ準備をしよう」と、気持ちを切り替えることができるようになりました。それによって、自分の心が穏やかでいることができ、一緒にいる子どもにも、それが伝わっているように感じます。

 

●加茂豪志さん/バスケットボールコーチ

普段、子どもたちと接している中で「これって、本当に子どもたちのためになっているのだろうか?」と感じることがよく起こります。しかし今回の講座を通して、「子どもの生きる力につながる大人の関わり方ってこういうものなのか」ということを、画面を通して受け取ることができました。

今回は、テーマが「森のようちえん」ということで、日本の保育園や幼稚園の年代の子に関わる人を対象に講座を開催していただいたと思いますが、これは、年代に関わらず大人が子どもたちにどう向き合って、関わってくべきかを考えさせられる講座であったと思います。

本当に理念から実例まで様々なお話を聞くことができたのですが、特に3回目に実践した「その子の持つ可能性などをイメージしていく」というエクササイズは今も一番記憶に残っています。このエクササイズを通して、子どもたちと衝突してしまったときなどに、見えている一面や印象だけで判断してしまっている自分がいたことに気づいたんです。

「なにか衝突してしまうことがあっても、その子の本来持っているいい面も思い返しながら関わるようにしよう」と決めてから、言葉のかけ方や携わり方が変わったと実感しています。こんなメソッドもあるのか、と、とても衝撃を受けたと同時に、やっぱりそういった子どもたちの未来の可能性をイメージしてあげることなどが大事なんだな、と改めて実感できました。

 

●樋口薫さん/翻訳関係・経営者

これまで翻訳の仕事に28年ほど携わってきましたが、残りの人生をかけて子どもたちの未来に関わる仕事をしていきたい!ボンサイのような保育の場を日本でも作りたい!と思い、ワークショップへの参加を決めました。

本当に今回参加して良かったと感じたのは、やはりリッケさんや、ボンサイで保育士をされている美奈子さんの佇まいや雰囲気を、画面越しとはいえ、生で感じることができたことです。

これまで書籍では学んできましたが、その現場の空気感というのは文字だけではやはりわかりません。今回直接お話を聞けたことで、「こういう素晴らしい大人に成長していくことができる保育の現場なんだ」と感じました。それはなんて素晴らしい、気高い仕事なんだろうと。私の中で描いていた夢がより解像度が高くなり、そしてステージが上がりました。夢を叶えるために、もうぼやぼやしていられない、とも思いました。

また、現場での保育の様子を映像で見ることができたことも、とても刺激になりました。特に、森で子どもたちが高いところにある細い枝にも登っていっているシーン。まるで私もそこにいるかのようにギョッとしたり、緊張して肩に力が入ってしまうほどヒヤヒヤしました。

でもその時に一緒にいる大人が全く焦らず、手を貸したり抱き上げたりすることもない。そこでリッケ先生が「子どもは、大人が抱き上げて木に乗せたり、下ろしたりしない限りは、自分の能力で降りられる高さまでしか登らないものです」と言っていた言葉が、ものすごくすとんと腑に落ちました。そしてその言葉を、あの後もずっと頭の中で繰り返し思い出しています。

言葉の端々や対応から、「この人たちは、なんて子どもたちへ絶大な信頼を寄せているんだろう!」と思いました。心から納得できたような、本当に心を打たれたような、貴重な体験をさせていただいた時間でした。

 

一人ひとりの創造性と多様性を引き出し・生かす教育を実現していくために
北欧・デンマークの森のようちえんが私たちに教えてくれたこと

<写真出典:イザラ書房刊行『北欧の森のようちえん』 から>

リッケさんとの対話の時間で、とても印象的であったこと。それは、リッケさんの中に、「教える側」「教えられる側」の線引きはなく、私たち参加者側が感じていること、直面している課題、これから実現していきたいことに対してものすごく関心を寄せて、フラットな関係性を築いてくださっていたことです。

「あなたは今どのような状況ですか?」
「なぜそこに課題を感じたのですか?」
「どのようにしていきたいと思っていますか?」
「あれからどうなりましたか?」

対話とは、一方的な関係では成り立ちません。年齢や立場などに関係なく、とてもフラットに相手に関心を寄せ、自分の考えを伝える。北欧・デンマークの人たちの「対話」に対する姿勢を直に感じることができたことは、日本に暮らす私たちにとって、とても貴重な経験であったと思います。

もうひとつ印象的であったことは、日本に対しての敬意を持ち、色々な制約の中でも、できることは必ずあるはずだと伝えてくれたことです。

「そこに木が1本でもあれば、そこは子どもたちにとって自然に触れられる場所になります」
「近くの公園にでかけるだけでもいい。そこでできることを見つけてみてください」
「日本は、とても美しい自然に囲まれている、素晴らしい国です」

どうしても、私たちはつい、北欧・デンマークでできていて、私たちにはできないことに目が向きがちです。しかし、リッケさんは、すでに私たちが持っている価値に目を向けながら、私たちにだからできる道があると伝えてくれました。

「ぜひ今度は、みなさんの現場に遊びに行かせてください。楽しみにしています。」

そんな言葉で締めくくられた今回の「森のようちえんとデンマーク流保育対話型ワークショップ」。これからもLilla Turenでは、ボンサイ研究所と協力しながら、日本にいる実践者のみなさまの、明日の実践へとつながるワークショップや研修などの企画をしていきたいと思っています。(まずは2023年8月後半に、デンマークでの視察プログラムを鋭意企画中です。どうぞお楽しみに!)

ご参加いただいたみなさま、インタビューにご協力いただきましたみなさま、最後までお読みくださったみなさま、本当にありがとうございました!

インタビュー・レポート/谷本明夢(講座企画チーム・対話ファシリテーター)