イベントレポート:スウェーデンの分けない教育 Vol.1 就学前からの起業家精神教育

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2018519日(土)品川のコクヨスタジオにて、「スウェーデンの分けない教育 Vol.1 就学前からの起業家精神教育」を開催しました。

愛知や静岡からいらした方も含め、約40名に参加いただきました。そのうち4分の1は教育関係者。加えて、子育て中の保護者、企業で人事に携わる方などにご参加いただきました。冒頭で質問させていただいたところ、スウェーデンへ渡航経験のある方が3分の1、ご自身で起業している方が4分の1もいらっしゃいました。

就学前教育・起業家精神教育と聞いて思い浮かぶ言葉は?

チェックインでは、今回のテーマである「就学前教育」と「起業家精神教育」について連想するキーワードを周りとシェア。

「就学前教育」については、自尊心/のびのび/個性を尊重/エリート/情操教育/しつけ/思いやり/傾聴力といったキーワードが。「起業家精神教育」については、発想力/オープンマインド/イノベーティブ/問題提起と問題解決といったキーワードがあがりました。どちらにも共通するキーワードとして、「すぐ行動できる」というコメントも。

EU innovation score boardで1位!数字でみるスウェーデン

ゲストのお話に入る前に、運営側よりスウェーデンの実情についていくつか数値をご紹介しました。働きやすい労働環境や持続可能な社会に向けた取り組み、そして今回のテーマに関わる「起業」にもまつわる主な数値がこちら。

・フルタイムの規定は週37時間、企業によっては30時間を目指す
・再生エネルギーの割合52
・家庭ごみリサイクル率99
EU innovation score board1
・法人税22

・インターネット利用率95

「起業家精神とは、アイデアを行動に翻訳する個人の資質(フィンランド教育省)」

スウェーデンの概要をお伝えしたところで、川崎一彦氏の話題提供に入ります。
北欧の起業家精神教育を研究されながら、事業開発に使われる「デザイン思考」を北欧式にアレンジしたワークショップを日本・スウェーデン各地で開催されている川崎氏。最初に、「起業家精神」についてフィンランドの教育省の定義を紹介いただきました。

”起業家精神とは、アイデアを行動に翻訳する個人の資質のこと”

「アイデア」を思いつくだけでなく、それを「行動」に翻訳できること。この二つが備わってはじめて、起業家精神をもつ人ということになります。

さて、今回のテーマである「起業家精神教育」とは一体、何を育む教育なのでしょうか?「起業家教育」とは何が違うのでしょうか?

この問いについて、川崎氏はこのように述べられました。

「外的起業家精神」・・・財やサービスを生産し、付加価値を創造すること
「内的起業家精神」・・・創造性、自己効力感、柔軟性、活動、勇気、イニシアティブ、リスク管理、方向性、協調性、モチベーション

内的起業家精神の豊かな子どもは、
・創造的で勇気があり、
・目的意識が明確でオープンであり、
・協調的で、責任感に富み、根気強い
・自信をもち、他の子どもともうまくやっていける子どもである

プレスクールや小中学校の指導要領にも明記される「起業家精神」の育成

内的起業家精神を育むために重要なのが、「自分で考え判断させる」「学ぶモチベーションを大事にする」、そして「実社会との壁を取り除く」こと。スウェーデンのプレスクールや小中学校の指導要領の中には、「起業家精神」を養うべき旨がしっかりワードとして出てくるそうです。

起業家精神を養う事例として、スウェーデン南部の都市ヘルシンボリの紹介がありました。まず、とても印象深かったのが、2035年に向けたヘルシンボリ市のビジョン。

市のビジョン
「人にとっても企業にとっても、創造的で、ワクワクし、グローバルで、協働し、バランスの取れた町を目指します」

学校のビジョン
ワクワクする学校。私たちは子どもたちの意欲、遊び、いたずら、真剣さを大切にします。ヘルシングボリではお互いに激励し、知識とアイデアをシェアし、楽しみます。」

都市のビジョンとしては見慣れない、「ワクワク」「いたずら」「楽しむ」といった言葉。大人たちがワクワクして将来のイメージを描きながら、このビジョンを創っている姿が目に浮かぶようです。

その後、ヘルシンボリ市のプレスクールでの実践事例(学びのコンテンツモデル、子どもたちの考えたことが反映される都市計画)や、フィンランドと日本の幼稚園をつないだコラボレーション事例(協働して車のコンセプトプロトタイプを作る)、大学生を対象にしたプロジェクトなどの紹介がありました。

特別ゲストからは、また別の観点から話題提供が。スウェーデンに高校留学・大学進学された山本修三氏からは「スウェーデンの学校と日本の学校の違い」、第五回アウトドア教育ご担当の西浦和樹氏からは「スウェーデンの幼児教育指針がとてもシンプルであること」、第四回リカレント教育ご担当の澤野由紀子氏からは「スウェーデンでは幼児教育こそが生涯教育・学び方の基礎であること」などが挙がりました。

質問をつくるワーク(回答のフォローアップはFacebookグループにて)

スウェーデンのコーヒーブレイク”フィーカ”を挟んで、グループワークに入ります。まずは、今日のプレゼン内容を聞いて浮かんできた疑問を一人ひとりが付箋に書いていきます。その後グループでシェアし、優先順位をつけ、川崎氏に投げかけ、イベント終了となりました。

今回いただいた主要な質問(下記)については、先生に回答いただきFacebookグループにてフォローアップさせて頂く予定です。参加者の方にグループへのご招待メールをお送りしておりますので、どうぞご確認ください。

・スウェーデンの教育ビジョンはどのように描かれているのか?
・スウェーデンでの教育改革のプロセスは?中でも、起業家精神が大事だというコンセンサスに至った経緯は?
・スウェーデンで起業家精神を重視した教育方針に変わってから、子供たちの様子はどのように変わったか
創造性・内的起業家精神はどうしたら身につけられるか
・スウェーデンと日本では学校教育に対して保護者の意識にどのような違いがあるか?
・スウェーデンと比べて日本の教育の優れている点は?また、スウェーデンで基礎学力(読み・書き・算盤)はどのように育てているか?

~参加いただいた方のアンケートから(一部抜粋)~
・ワクワクすること自体に価値がある、ということが印象に残った
DSDDo Something Different、創造性を育成する方法)を実践したい
・様々な業種の方と意見交換ができ、大変有意義なひと時となった。”保育”の世界でしか生きてこなかったので、自分のもっていない考えに触れることができたのは自己を広げるきっかけともなった。
・質問のワークショップで他の参加者の視点が新鮮で刺激を受けた
・スウェーデンの良い点を日本でどのように実践していけるかを知りたい
・就学前教育と起業家マインドにどのような相関性や科学的根拠があるか知りたい

今回カバーしきれなかった点、もっと知りたい・深めたいとお声が上がった点については、第二回以降でご紹介していけるよう鋭意企画してまいります。


次回は、616日(土)インクルーシブ教育をテーマにイベントを開催します。
ストックホルムの高校で教壇に立つ現役教師のアールベリエル松井久子氏より、実際の授業の様子や、先生と生徒との関係を紹介いただきます。松井氏の教え子で、日本の大学に留学されたスウェーデン人お二人にも参加いただきます。ぜひご参加ください。

*北欧の教育・学びLilla Turenでは、Webやリアルな場を通して様々な切り口から情報発信を行っていきますが、もっとフラットに双方向の議論を深めて行く場として、オープンなFacebookグループ「JAPAN∞HOKUO」を設けております。どなたでもご参加・ご投稿いただけますので、ぜひお気軽にご参加ください。