イベントレポート:一人ひとりの個性を伸ばす教育とは(デンマーク×ニューロダイバーシティ)後編

PAGE VIEW: 321

デンマーク教育体験ワークショップで面白いと感じた3つのこと。前の記事では、①②をご紹介しました。ここからは③と、午後のおはなし会の様子を少しご紹介します。

 

③他者との対話を通して、物事を多面的に見る視点を身につける

ワークショップは、みんなでゲスト(ようこさん)に「その人がどんな人なのか」「その人のニーズ、こうなってほしいという思い」を探る質問を投げかけた後、大人も子どもも個人ワーク(みんな同じ課題に取り組みます)。その後、他の人とシェアという流れで進みました。

他の人とのシェアでは、席をシャッフルし、大人も子どもも混ざり合って、「描いた家のポイント、特徴、面白いところ」「自分のアイデア、ようこさんのためにこういうところを考えて作ったという点」を紹介していきます。

これに対して、他の人たちは「どうして?」を質問していきます。
どうしてここはこうなってるの?」
どうしてここにあるの?」
どうしてここじゃなくてここなの?

このような形で人とアイデアをシェアすることで、デンマークでは、物事を多面的に見る視点、自分が持っている以外の考え方、今まで考えたことのない裏の見方に触れることを大事にしているのだそう。加えて、もし人のアイデアに対して「それはありえないでしょ」とか「それはいいね」と思った場合。「なぜそう思ったのか?」と自分に投げかけ、深く考えるプロセスを大事にしているのだそうです。

「それがいいか悪いかは、誰も決めることができない。状況、人の関係、環境や歴史、文化によっていかようにも見ることができる。何か物事が起きた時に、これってどういうこと?と分析できる力があることが大事。自分には想像できないことが必ず他人にはあるんだと知っていることが、多様性ある社会では重要です」

そう締めくくられた海野さんの言葉が印象的でした。

 

~午前の感想・アンケートから(一部抜粋)~

  • 大人と子どもと混ざって話し合うと、想像がどんどん膨らんで楽しかった。大人だけで会議する時と違った。
  • 最初家を四角で描いた。でも、希望をかなえようと思うと四角じゃおさまらない。その時、「そうだ、ドラえもんの話が出ていたからそっちの感覚で描こう」とスイッチが入った瞬間があった。
  • 最初屋根のない家を考えたが、雨が降ってきちゃう、と現実的なところに落ち着いた。でも、屋根をつけることによって、二階からすべり台で降りるというアイデアが出た。他の人とシェアした時に、壁や天井がない家、空が見えてオーロラがカーテンという家を描いている人がいて、「それを求めてた!そういう発想OKなんだ」という発想と出会えた。
  • 家の中を描いている人もいたけど、自分は室内より外の環境を描いていた。そういう特徴を持っているということがわかった。
  • さっき「鉛筆を置ける人は置いてください」と言われたけど、日本の学校だと「鉛筆を置いてください」と言われる。それが違うなと思った。(←小学生の気づき)
  • 子どもの自由な発想に驚かされた。自分のアイデアが平凡に感じた(笑)また、一連のプロセスは、新製品開発のプロセスと通じるものがあった。相手に質問するが、答えをそのまま全て反映はしない。相手が本当に何を求めているのか探り、自分のアイデアを加えてプロトタイプを作る。人からフィードバックをもらい、アイデアを深める・・・。これは会社で親子参加型の研修としてやってみたい。

今後のこと

海野さんによると、今日やった活動はこれでおしまいではなく、この後に続くダイナミックな学びの初期の初期なのだそう。この後、実際に建築現場や建築デザイナーのところへ出向き、三ヶ月かけてグループで縮小版の家を創造するそうです。また、考えた家が現実的かというのを考えるところで、算数や理科、国語といった教科要素が入ってくるのだそうです。

ぜひそのプロセスを体験してみたい・・・!というわけで、今後の展開を考え始めています。

 

午後のおはなし会から -“ありのまま”を尊重し、楽しむ-

この日の午後は、海野さんと、松木さん(一人ひとりの子どもに寄り添う教材作りを手がける「らしく」代表で、ちょうど同時期にデンマークを視察)の対談を行いました。

「デンマークのことを色々聞かれるけれど、デンマークに答えはないと思っています。正解もない。どこに住んでいても、自分がどう生きて行くか。自分が心地よいということを軸にどう生きて行くか。どう人と分かち合って行くか。今日はデンマークのこともお伝えするけれど、皆さんがどう思っているかを知りたいです」

そんな海野さんの言葉から始まった対談。一人ひとりの心地よい学びの環境づくりに始まり、不登校の子どもに合わせた“授業”の進め方、「自分のありたい姿」の培い方、教員養成学校での学び、民主主義教育まで話題は多岐におよびました。
なかでも午前のワークショップともつながった言葉をいくつかご紹介します。


松木さん「落ち着きのない子が居心地の良い椅子・教室をお金をかけて作っている。でもクラスによっては普通の教室。日本だと『そのクラスずるい』となるかもしれないが、デンマークでは、みんなに同じように資源を分配する、ではなく、みんなが心地よい状態を作るために資源を分配している

海野さん「デンマーク視察に来る方からメソッドやアプローチを聞かれることが多いですが、それより、大人が一個人として、相手一個人にリスペクトの気持ちを持って接している。子どもがそれを見ると、自分にとって何が大事なのか、何を学びたいのか、ということを考える。大切にされた子供は人を大切にする。生きるということを毎日丁寧にゆっくりやっている国だし、教育現場にも浸透していると思います」

(「日本だと弱みの部分で生きづらさを感じてしまうことも多い。デンマークでは弱みとどう向き合う?」との質問に対して)
海野さん「そもそも強み、弱みとは何か。弱みと思ったのはなぜでしょうか。他の人ができることができないから?デンマークだと、他の環境で他のツールであればできる、と考えることが多い。デンマーク人は、見方を変えるとそれは真逆かもしれない、違う可能性を生み出すものかもしれない、と考える人たち。
大人がこれは長所・短所と考えること自体、制限をかけること。そもそもジャッジしないほうがいい。この子にはこういう特徴がある、ということを楽しむ。そのことを楽しめば、子どもの自信になる。他の人と比べて劣っているんだと考えることもない。これからの時代何が役立つのか、もはや私たちにはわからない。“長所”を見つけることはできない。“ありのまま”を、家族や仲間と一緒に楽しむしかないのではないでしょうか

海野さん「デンマークの親子を見ていると、親は完璧である必要はない。大人はいつも正しい判断をする存在ではない。人間だから失敗も間違った判断もする。気分屋だし、明日には違うことも言う。子どもをコントロールすることもある。でも、こういうふうに言ったほうがよかったよね、と別の機会に話せばいい。常に一定の態度で接しなければいけないわけではない。時にわがままで、叱ってしまうこともある。でも、変わる必要もない、変えさせられる必要もない。その人がその人らしさをそのまま表現する、それが自然ということを本質的にわかっている人が多いと思います」


<主催者の感想>
日本で子育てをしていると、「親はこうあるべき」「子どもはこう育てなければ」というプレッシャーに縛られがちです。でももし、「親もありのままでいい」「子どものありのままを楽しめばいい」と思えたら、ふっと肩の力が抜けるだろうなと思いました。
また、午前に続き、「自分とは違う意見に出会ってモヤモヤやイライラを感じたら、なぜそう感じたのかと向き合う。それは、物事の新しい見方に出会うチャンス」との言葉がありました。日本でも多様な人・多様な考えとの出会いが増えていくこれからの時代、モヤモヤ・イライラを感じることも増えるかもしれません。そんな時に、この言葉を思い出したいなと思いました。

 

~午後のアンケートから(一部抜粋)~

  • 子どもと向き合う意味でヒントがいっぱいありました。(最初はかぶれただけでも)こういう考え方をする中で、腑に落ちる経験、外に広げることをしたいと思います。(教育関連企業・団体所属)
  • 「自分たちのことや、国家をどうしたいか」という議論をベースに生活や学びを想像していくことが大切だと思いました。関西でもセミナーをやってほしい。(小学校教師)
  • 子どもの凹凸が強く、様々な考え方を模索した末、ニューロダイバーシティという考え方に一番共感できた。海野さんの話がとても参考になった。子どもが悩んでいることにどんな心持ちでいれば良いかヒントが得られた。(子育て中の保護者)
  • 海野さんのお話が感動するくらい素敵だった。今まで子どもの意見を聞いて受け入れることに重点を置いていたけど、私はこう思うという話をして対話しようと思う。そして人生においてもそうしようと思う。(保育士・幼稚園教諭/子育て中の保護者)