プログラムレポート:対話でふかめるデンマーク教育視察プログラム Day1 – 森のようちえん こども島ボンサイ(前編)

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2023年8月21日(月)~25日(金)、デンマークで開催した「対話でふかめるデンマーク教育視察プログラム」。現地でのプログラムの様子を、参加者レポートとともにお届けします。

※Day1 – 森のようちえん こども島ボンサイ(後編)はこちら

 


 

8月21日、いよいよ5日間のプログラムのスタートです。

初日は全員でコペンハーゲン中央駅に集合。

電車内で参加者やスタッフ同士「はじめまして」の挨拶をしながら、こども島ボンサイがあるシャルロッテンルンドに向かいます。

コペンハーゲン中央駅から電車と徒歩で約30分ほど、美しい緑に囲まれた海沿いのエリアに到着しました。

 

「暖かい服装と上着は忘れずに!」と現地コーディネーターに事前に念入りに言われるほど冷夏だった2023年のデンマークですが、プログラム期間中は幸いお天気にも恵まれ、初めての場所、美しい自然に参加者の足取りも軽くなります。

 

そしてついに、こども島ボンサイに到着!

 

園長のリッケさんともついに初対面。参加者のなかにはオンラインワークショップでご一緒した方、リッケさん来日時のイベントでご一緒した方もいたため、自然と笑みがこぼれます。

 

荷物を置かせてもらい、まずはリッケさんガイドのもと、園内を紹介していただきました。

 

【園内ツアー】やわらかな雰囲気の園内と豊かな自然に囲まれた空間

ボンサイのメインキャンパスにある建物は、もともとレストランだった3階建ての一軒家。

ここには、0~3歳の子どもが通う保育園部が2クラス、3~6歳が通う幼稚園部が4クラスあり、全部で135名の子どもたちが過ごしています。

 

初めてデンマークの幼児教育施設を訪問して一番初めに驚いたのは教室のデザインでした。教室というより家という方が合っているような部屋の雰囲気にとても衝撃を受けました。

床が剥き出しではなくラグが敷かれてあったり、クッションがたくさん置いてあったり、可愛い形の照明がついてあったり、壁に絵が描かれていたり、よく見る外国の子ども部屋のような雰囲気がとてもリラックスできるものだと直感的に感じました。

日本の幼稚園の教室は、壁際にロッカーがびっしりと並んでいて決められた空間の中に机や椅子を自由に並べられるような仕組みになっているものが多い印象ですが、ボンサイでは(デンマークの森のようちえんでは)部屋のインテリアやデザインを担任の先生が自由に決められるということも印象的でした。

 

 

次に印象的だったのは、子どもたちが過ごせる場所の多さ。

これは森のようちえんだからこそという面もあるかもしれませんが、屋内においても子どもたちの過ごせるスペースがとてもたくさんあることに驚きました。

部屋の数がとても多いというわけではないのですが、部屋の中にさまざまなスペースがあって、子どもたちが自由にそれぞれの時間を過ごせる工夫がされているとのこと。

日本ではひとつの部屋の中を何区間かに区切っている教室はあまりなじみがない気がします。リッケさんがおっしゃっていたように、園庭でもコーナーを分けて、子どもたちが遊びに集中できるようにする工夫が興味深かったです。

 

参加者ライター・大村初さんレポートより

 

続いて園内の活動エリアも案内していただきました。

子どもたちはクラスごとに分かれて、自然の中で活動を行います。

外で活動を行うときには、ボンサイの敷地のほか、隣接する公立公園や王室の旧別荘であるお城が立っているエリアも使うことができるのだそう!

 

贅沢な自然環境はもちろんのこと、これをどう活用して日々の活動を行っているのか、さらに関心が高まります。

 

【レクチャー】ボンサイのベースにあるシュタイナー教育と愛着理論

園内ツアー終了後、お茶とコーヒーをいただきながらレクチャータイムです。

ボンサイに勤めているブリットさんに、「愛着理論」についてお話をいただきました。

 

ボンサイはシュタイナー幼稚園ですが、シュタイナーの理論自体は100年以上前に提唱されたもの。当時と今では子どもたちがまったく異なる環境で生きていることを踏まえると、現代の理論も織り交ぜながらアップデートしていくことが必要と考えているため、積極的にシュタイナー以外の教育理論についても学んだり、取り入れたりしているそう。そのひとつが、この日お話しいただいたカナダの臨床心理学者であるゴードン・ニューフェルド博士の「愛着理論」に関する研究なのだそうです。

 

ここでは、お話いただいたなかで印象的だったトピックを抜粋してお届けします。

 

①愛着はヒエラルキー – 大人の適切なガイドで、子どもは安心して愛着を受け取ることができる

 

ブリット先生曰く、「言うことに従わせる」という意味のヒエラルキーではなく、トップにいる存在が全体を愛着で包み込みガイドし、下にいる者はそれを受け取る、というイメージとのこと。そのトップの役割を、先生や大人が担うことで、子どもたちが適切に愛着を受け取れる環境になるのだそうです。

しかし、大人が強いリーダーシップを持っていなかったり、子どもに決定権を委ねすぎたりする場合に、子どもがヒエラルキーのトップを取ってしまうこともあります。

トップを取った子どもは、「自分がヒエラルキーのトップである」という自覚を持つことで、シュタイナー教育で大切にされている「自分を忘れて何かに没頭する」ということが難しくなったり、子ども同士の関係性の中でも相手をコントロールしようとしまったり、それが思い通りにならない場合はパニック状態になってしまうという影響があるのだそうです。

子どもが決定権を持つことは一見よいことのようにも見えますが、大人が責任を持って安全に過ごせる枠を作り、その中で子どもが決めていけるということが重要なのだと感じました。

ちなみに、大人との強い愛着形成がない状態で子ども同士での愛着のみが形成されてしまうと、先生の話を聴かない、授業や活動の邪魔をする、といった行動につながることもあるそうです。

 

②幼児期の成長段階を理解し、大人が子どものエネルギーの流れをガイドする

 

レクチャーでは、ゴードン・ニューフェルド博士の愛着理論とシュタイナー教育の理論それぞれで、0~6,7歳の時期の成長段階をどうとらえているか、についてもお話しいただきました。

シュタイナー教育では、この時期は「今に集中する」時間と捉えられており、この時期に知識を詰め込むのではなく、世の中をたくさん経験すること、そして外の世界からのエネルギーや刺激を、すべての感覚を通じて受け取ることが大切だと考えられているそうです。

また、この時期の子どもは意思の力が非常に強く、思考と行動を一緒に行うことが難しい、ということも理論として理解すると、日常の中で、子どもたちにいくら言葉で説明をしても理解してもらえない、思った通りにいかないのが当たり前だ、と腑に落ちました。

さまざまなことに興味がわき、衝動的に行動することが普通である子どもにとって、歌は集中する手助けとなるのだそうです。実際に、歌で子どもの集中力やエネルギーの流れをうまく先生がガイドしている様子は、ボンサイでの研修中にたびたび見かけることになりました。

 

③遊びの重要性 – 今を重視し、過程を大切にするコミュニケーション

 

子どもの流れをガイドするというお話から、遊びの重要性についてもお話しいただきました。

遊びの要素を使うことで、子どもの流れをガイドしやすくなるという大人にとってポジティブな面はもちろん、子どもにとっても、遊びを通じて、自分を忘れて没頭することや自分を発見することができるといった側面があります。

また、ストレスやフラストレーションを吐き出す時間にもなるのが大切なポイントです。遊びの中で吐き出さないと実生活の中で吐き出すことになり、家族や先生、友達を傷つけることになるかもしれないので、そういったネガティブな部分を出してしまうという面もあるのだそう。

友達と遊ぶだけでなく、一人遊びも、心の中にある一日にあった出来事や問題を消化する時間としてとても重要な役割を果たしているのだそうです。

「遊びで大切なのは、仕事や労働ではないということ。結果を求めず、今を重視し、過程を大切にすること。大人になると、遊ぶことがすごく難しくなるんですよね。」というブリットさんのコメントに、大人と子どもの物事の進め方を同じものととらえてコミュニケーションしていないか?と自分に問いかけました。

 


 

愛着があることで子どもたちは心を開き、そうすることでリラックスして、安心・安全を感じることができるようになりますが、重要なのは、大人が子どもを愛するだけではなく、子どもも大人を愛することなのだそうです。よい愛着形成ができると、磁石のようにお互いを引き寄せて、一緒に何かをやりたい、という関係ができてきます。

これを実現するためには、大人が自分自身に対して愛着を持って、自分のコアをしっかり持っていることが大切です。そのためのセルフケアの重要性も、普段自分のことを後回しにしてしまいがちな私たちにとって、非常に興味深いテーマでした。

 

 

【ランチタイム】自然の中でいただく手づくりランチ

この日のランチは、3日間メンターとしてサポートしてくださる先生方と一緒に外でピクニック。

園のキッチンで作られた、子どもたちと同じメニューのものをいただきました。

オートミールのおかゆ、手作りパン&バター(このバターが絶品!)

 

ボンサイの食事はすべてベジタリアン食となっています。

食事についても、シュタイナー教育で大切にされているリズムの考え方が反映されており、各曜日のメニューは基本的に固定。その中に季節の食材を取り入れることで、季節のリズムも感じられるようなメニューになっているのです。

 

お互いのバックグラウンドやプログラムに参加した理由などを話しているうちに、各グループとも大盛り上がり!

まだまだ話したりない気持ちを抑えつつ、午後のプログラムに向かいました。

 

午後のレポートは後編に続きます

 

 

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Photo by Masato Sezawa

Report by Mai Kikuchi