2023年8月21日(月)~25日(金)、デンマークで開催した「対話でふかめるデンマーク教育視察プログラム」。現地でのプログラムの様子を、参加者レポートとともにお届けします。
※Day1 – 森のようちえん こども島ボンサイ(前編)はこちら
※Day1 – 森のようちえん こども島ボンサイ(後編)はこちら
【活動同行・観察】子どもたちのリアルな様子から学びを深める
2日目は子どもたちの活動同行・観察から。
3つの小グループに分かれて、ボンサイスタッフのメンターと一緒に子どもたちの日々の様子を見ていきます。
グループごとに活動は異なりますが、朝のスタートは円になって、一緒に歌を歌うところから始まります。
朝の会は子どもたちの出席確認も兼ねているのですが、歌に乗せてひとりひとり子どもたちの名前が呼ばれます。
先生、同じクラスの友達たちから名前を呼ばれることで、今ここにみんなといる自分という存在を認識することができるのだそう。
Day1のワークショップで美奈子さんに教えていただいた歌遊びも、この時間に行っています。
朝の会のあとは、各グループでの活動に入っていきます。
ここでは参加者ライター大村さんが同行したグループの様子をご紹介します。
今日の午前中はひとつの幼稚園生グループを観察し、一緒に時間を過ごしました。
そこで一人の女の子と仲良くなって一緒にいたのですが、その子が自然のことや決められたルールについてとてもよく理解していて驚かされました。
名前はわからなかったけれど、ある植物の種の部分を押すとそのさやがくるくる巻くことや、食べられるベリーの名前やその色によっての味の違い、また「黄色の旗の先には行ってはいけない」といったルールなどを私に教えてくれました。
私はデンマーク語を勉強しているのですが、その子のデンマーク語は半分くらいしか理解できませんでした。でも、私のデンマーク語を理解して返してくれたりと、拙いながらもコミュニケーションを取ることができ嬉しかったです。
また、日本の子どもたちと話す言葉は違うけれど、
「木に登るから見て!」
「高いところにいるから見て!」
「面白いものを見つけたから見て!」
と言って大人の注意を引いたり、褒めてもらったら嬉しいと思ったり、転んでしまって大丈夫?と聞くと「平気平気!」とちょっと背伸びをして答えたり、友達と競ったりするところは、国が変わっても同じなのだなと感じました。
(参加者ライター・大村初さんレポートより)
レポートの中にもあるルールについて、私が同行していた別のグループで園の外に遊びに出かけた際も、子どもたちが遊んでいい範囲を認識し、その中で自由に遊ぶ様子が見受けられました。
「ルール」というと大人から子どもに課すもののようなイメージを少なからず持っていましたが、ここでは先生と子どもの間にある愛着とヒエラルキーによって、お互いに安心・安全な場所の認識を共有しているのだな、とDay1のレクチャーを振り返っていました。
また遊んでいる最中の子どもたちの反応は、午後のレクチャーで学ぶ「自尊心と自信」にもつながっていました。
レクチャーでの学びと実際の現場がつながってより学びが深まる、そんな観察の時間でした。
観察が終わったら、全員でランチ。
園庭をお借りして、キャンプファイヤーを囲みながらのランチです。
キャンプファイヤーのための薪割りも体験させてもらいました。
この日のランチはライ麦パンとビーツ、ひよこ豆やごま、カッテージチーズのペーストなどでした。
ランチのデザートとして準備してくださった、キャンプファイヤーの火で作る砂糖&バターのりんご焼きがとてもおいしかった!
【レクチャー&ワーク】自分にとっての自尊心と自信とは?
ランチの後、そのまま園庭で午後のレクチャーに移りました。
今日のテーマは「自尊心と自信」です。
自尊心と自信は、次のようにとらえることができます。
自尊心
自分自身についての思い・考え方であり、積み上げてでき上がるもの。他者との関わりや自己評価に影響を与える
自信
自分の能力についての思い・考え方であり、何かがうまくできることに対しての気持ち
ボンサイでは、子どもたちの成長において、人間としての土台となる自尊心と自信の両方を育むことが重要であると考え、大切にしています。
そのために、何かをするときに子どもたちに強制はせず、自然に誘い、励ますことで子どもたち自身でプロセスに参加できるようにすることを心掛けているそうです。
それによって子どもたちは、自分が何かを実際にやっているということを感じ、自尊心と自信を両方育てることができるのだそう。
その後、Day1同様、リフレクションを実施。
「自分、または職場においての自信と自尊心の意味とは?」という問いに対して、考えたことや思いついたことを、深く考えずに書き続けていきます。
その後、フルートの音色を聴きながら、深呼吸してリラックス。何も話さずに目を閉じて、今ここにある自分に集中します。
そのあとは3人ほどのグループに分かれて、各自好きな場所で、考えた結果ではなくこのエクササイズを通じて感じた変化などのプロセスを共有。
前日に続き、この日のエクササイズ後もこんな感想が出ていました。
だんだんと問題が焦点化されて本質まで掘り下げることができた
自分の内面に向き合う時間があり、普段考えることのない自己評価や価値観に気づくことができた
体験した参加者の方から、このエクササイズを自分の園のスタッフと一緒にできるか?という質問がありましたが、答えはYes。
始めるときにセオリーが頭に入っていることが必要ではありますが、このエクササイズはどんな質問やテーマでも応用することができるうえに、うまく活用することで本質にたどり着くのが早くなったり、そのために会議や話し合う時間を減らしたりする効果もあるそうです。
エクササイズを通じて心がより開かれた参加者のみなさんからは、リッケさんご自身の経験やデンマークの制度などについての質問がたくさん出てきて、次のワークショップぎりぎりまで対話が続きました。
ワークショップと市内キャンパス訪問の様子は後編に続きます
Photo by Masato Sezawa
Report by Mai Kikuchi