プログラムレポート:対話でふかめるデンマーク教育視察プログラム Day1 – 森のようちえん こども島ボンサイ(後編)

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2023年8月21日(月)~25日(金)、デンマークで開催した「対話でふかめるデンマーク教育視察プログラム」。現地でのプログラムの様子を、参加者レポートとともにお届けします。

※Day1 – 森のようちえん こども島ボンサイ(前編)はこちら

 

 


【レクチャー&ワーク】自然の中で自分の内にある考えを問い直してみる

午後は、ボンサイの園舎から道を渡ったところにある広場でのレクチャーとリフレクションからスタートです。

 

リッケさんからのレクチャーテーマは「子どもの観察と保護者との対話」。

午前のレクチャーで、子どもとの愛着形成についてお話をしていただきましたが、子どもにとってより良い環境を作るために、保護者とどのように信頼し、協力関係を作ることができるのか?という観点で一緒に考えを深めました。

 

デンマークは男女問わず個人のキャリアを尊重する考えがあるため、早い時期から子どもを預けるという選択をする保護者も少なくないのですが、やはり保護者と子どもが離れて過ごすということは、精神的な負担になることもあるのだそう。

そういった状況を考えると、子どもとのみならず、保護者と先生の間の愛着形成も非常に重要になります。

ここでは子どもを一緒に育てる信頼関係、という方がイメージしやすいかもしれませんね。

 

ボンサイで行われている保護者と先生の愛着形成のための取り組み例を紹介いただきながら、参加者自身が現在の保護者との関係やよりよくするためにどんなことができるか?を考えるリフレクションも行いました。

テーマに対して文章で頭の中にあるものを書き出した後、自然の中を歩くマインドフル・ウォークを実施。

 

戻ってきたら、再度書き出した文章について自分に問い直してみて、心に浮かんできたものを参加者同士でシェアします。

 

マインドフルネスを用いたこの方法は、初めて経験する方も多かったのですが、考えがシンプルになった、クリアになったという感想が多く出ていました。

リッケさん曰く、人間は頭だけでなく心も使って考えることが必要であることを、この方法を通じて実感できるそう。慣れていない方にとっては難しいこともあるのですが、参加されたみなさんはその感触をつかむことができたようです。

 

 

【ワークショップ】自然の中のクリエイティブプロセス

コーヒーブレイクで一息ついた後は、ボンサイに勤める日本人保育士の美奈子さんによるワークショップです。

テーマは「ボンサイにおける歌遊び、指遊び、おはなし」。

この時間は、シュタイナーペダゴーである亜希子さん、ボンサイのボランティア職員である藍さんにもワークのサポートをしていただきました。

 

まずはみんなで実際に歌遊び、指遊びを体験してみよう!ということで、美奈子さんたちが翻訳してくださった日本語の歌にのって遊び体験。

はじめは少し戸惑い気味だったみなさんも、見よう見まねで歌ったり動いたりしているうちに、すっかりこの笑顔!

 

「子どもは模倣から学ぶ」「遊びの重要性」といったポイントを午前のレクチャーで伺っていましたが、まさにそれを体感する時間となりました。

 

遊び体験のあとは、質問を交えながらシュタイナー教育の中で歌が持つ役割について、美奈子さん、亜希子さんに教えていただきました。

 

シュタイナー教育ではリズムを大切にしているというのも面白いと思いました。

毎日同じ時間に同じ遊びをしたりご飯を食べたり、毎週同じ曜日に同じ場所で遊んだり、毎年同じ時期に同じイベントを祝ったり、どの幅で時間を切り取っても徹底的にリズムが尊重されていたのは印象的でした。また、このように幼いうちから生活にルーティーンを作ることで、大きくなってからも自己管理がうまくできるようになるのではないかとも思いました。

大人になってから自分で生活にルーティーンをつけて良いリズムで生活をするのは簡単なことではないですが、昔からずっとそうしていれば難なくこなせるだろうと思います。

また、デンマークでは夏と冬で日照時間が大きく違うため、自分の中でルーティーンを定めることがとても重要なことなのかもしれないと思いました。

 

参加者ライター・大村初さんレポートより

 

まさに歌遊びでもこのリズムが意識されており、一回に歌のアクティビティの長さが決まっていたり、季節のお祭りと関連していたりと、シュタイナー教育を実践するうえで大切な要素のひとつであることが伺えます。

また、午前のレクチャーで伺った「すべての感覚を通じて世界からの刺激を受ける」という理論も、身体を全部使った歌遊び、指遊びで実践されるよう設計されているのが非常に印象的でした。

動きが言葉に連動するようにされていたり、指遊びをしながら想像力を鍛えるしかけがされていたり、さまざまな刺激を子どもに与える工夫が散りばめられています。

 

そしてなにより心に残っているのが、「模倣から学ぶ子どもたちが、次は何?と好奇心をそそられて真似したくなるように、先生である私たちが遊びに心を込めて真剣にやることが重要」という亜希子さんのお言葉。遊びを通じて子どもに届けたいことをしっかり持って、大人がぶれずに取り組んでいくことの大切さを改めて気づかせてくれました。

 

最後は美奈子さんによるおはなしの時間を体験。

おはなしの時間にも、歌遊び、指遊びのときと同様、リズムや子どもの想像力を鍛える工夫がなされていました。

 

初日にシュタイナー教育の理論や、ボンサイが大切にしている理念に体験も交えながら触れたことが、その後の研修の解像度をさらに高めてくれました。

 

2日目からはいよいよ、子どもたちの様子を間近で見学していきます!

 

 

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Photo by Masato Sezawa

Report by Mai Kikuchi